2022年最初の小話は 広島大学病院 内分泌・糖尿病内科 米田真康医師からです!
新年、明けましておめでとうございます。
2021年は新型コロナウイルス感染の猛威に襲われ、一部では医療崩壊を招き、たくさんの方が亡くなられた大変悔しい年でした。今もなお、オミクロン株の感染拡大が懸念されており、3回目のワクチン接種、有効な治療薬の一刻も早い開発が待たれ、そして日頃から血糖コントロールを良好に保ち、肥満を是正することが、手洗い・マスク着用の徹底とともに重要です。
さて、2022年最初の小話は、「糖尿病患者の平均寿命と死因」についてです。新年早々、重いテーマですが、年の初めだからこそ皆様にお伝えしておきたいことがあります。「2021年、癌(がん)検診や健康診断をきちんと受けましたか?」
図①は、10年ごとに日本人一般と糖尿病患者の平均寿命を比較したものです。1970年代では、糖尿病患者は一般に比べ、男性で10歳、女性で14歳ほど短命でした。しかし、近年の糖尿病治療薬の進歩、医療機関や自治体などの社会的な取り組みや啓発活動によって、この30年の間に、糖尿病患者の平均寿命は男性で8歳、女性で10歳延びて、一般との差が2~3歳ほど縮んでいます。それでもまだ男性で8歳、女性で11歳の差がありますね。
続いて、図②は死因の比較です。以前は、心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管障害といった「血管障害」が糖尿病患者の死因の最多でしたが、これは徐々に割合が減ってきました。その代わりに、悪性新生物、つまり癌の割合が増えてきて、1990年代以降は死因の第一位となりました。図には記載がありませんが、糖尿病患者では大腸癌も多く、そして女性では乳癌や子宮癌にも気を付けなければいけません。癌は今のところまだ血液検査だけでは見つけることが不十分であり、内視鏡や画像検査、細胞診など特別な検査が必要です。市町から送られてくる癌検診の案内を捨てたりせず、きちんと受けることが大切です。
そして、水色の線で囲まれているように、糖尿病では感染症による死因も一般より高くなっています。血糖コントロールが悪いと、免疫力が低下し、感染症に罹るリスクや重症化するリスクが高くなります。現在、日本糖尿病学会では2011~2020年の死因についてのデータを全国の医療機関から集計中ですが、癌や感染症の割合は恐らく高くなっていると思われます。
2022年は、新型コロナウイルス感染から身を守るために、食事や運動に励み、血糖コントロールを良好に保つこと、いくつも種類のある癌を早期に発見するために癌検診を受けること、を忘れずに、合併症を防いで長生きできるよう、皆で頑張りましょう。